ChatGPTでついに「英語」が習得できるようになる
シンボル・グラウンディングを活用した勉強法
分解法だから、英語が上達しない
私はかねて、日本人の英語力が低いのは、勉強法に問題があるからだと考えていた。多くの日本人の勉強法は、辞書をひいて英単語の意味を調べ、文法を用いて文章の意味を理解していくというものだ。この方法を私は「分解法」と呼んでいる。
分解法では、いつになっても英語は上達しない。なぜなら、日本語と英語は全く異なる体系の言語であるため、英語の単語と日本語の単語が、一対一には対応しないからだ。
例えば、makeという英単語は「作る」だと覚えても、実際にはそれと大分違う意味に用いられることがある。逆に、「作る」の意味の英単語は、make以外にも沢山ある。
英語とドイツ語のように似た構造の言語間であれば、分解法も機能するだろう。しかし、日本語と英語は、このような機械的な方法では、うまくいかないのだ。しかも、孤立した単語の意味を個別に覚えようとしても、なかなか覚えられない。
では、どうしたらいいか? 英語の文章全体の意味を捉え、その中で、個々の単語の意味を理解するのである。つまり、単語という個々の部品を組み合わせて全体を理解するのではなく、まず全体を理解してから、個々の部品の意味を知るのだ。
そして、記憶するにも、個々の単語ごとに記憶しようとするのでなく、文章全体を丸暗記する。この方法を私は「丸暗記法」と呼んでいる。これはすぐに忘れてしまう、という意味の悪い意味での「丸暗記」ではない。英語の勉強を「分解法」から「丸暗記法」に切り替えれば、英語力は間違いなく上達する。
ChatGPTを用いると、丸暗記法を容易に実行できる。まず、全文を訳してもらう、あるいは要約してもらう。それによって全体の意味をとらえる。その後に英文を読む。そうすれば、分からない単語の意味は、文脈からわかる。ChatGPTが登場して、英語の丸暗記がさらに有効性を高めたのだ。
ChatGPTが教材を教えてくれる
丸暗記するテキストとしては何がよいか?まず考えられるのは教科書だが、これは面白くないかもしれない。文学作品などのほうがよいだろう。
問題は、どうやってテキストを手にいれるかだ。インターネットの普及によって、英語の テキストを入手することは、著しく容易になった。しかし、必ずしも望むテキストがすぐに手に入るわけではない。
例えば、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の名場面を覚えたいとしよう。インターネットを検索しても、英文のテキストがどこで手に入るかは、 簡単には分からない。
「ロミオとジュリエット セリフ 英語」と検索すれば何とか辿りつけるかもしれないが、確実ではない。また、テキストを得られたとしても、目的の箇所(たとえば、「バルコニーの場」)がどこにあるかを見いだすのは、容易ではない。
この問題をChatGPTが解決してくれる。 英文のテキストだけでなく、日本語訳がほしい場合もあるだろう。また、朗読を聞きたい場合もある。これらは、 テキストを手に入れれば、ChatGT が簡単にやってくれる。 ただし、もとのサイトで これらが得られればもっと簡単だ。「こうした条件を満たすサイトを教えてください」と聞くこともできる。
こうして、丸暗記法を行うための教材を得るのが、著しく簡単になった。私は、丸暗記法の教材のありかを示すウェブのリンク集を作っていたのだが、ChatGPTの出現で、このリンク集は不要になってしまった。
丸暗記法の教材を得るもう1つの方法は、丸暗記する文章を自分で作ることだ。自分で日本語の文章を書き、それをChatGPTに英訳してもらえばよい。なお、この方法は英語を書く訓練にもなる。
シンボル・グラウンディングとは何か
実は、人間は、幼児の時からの様々な体験を通じて、丸暗記法に近い方法で言語を習得しているのである。
例えば、「熱い」という言葉は、実際に高温を感じた経験に基づいて理解される。つまり、「熱い」という言葉や概念が、実世界の対象や状況に「接地」している。あるいは、「月」という言葉の意味は、「あれがお月様だよ」と教えられた時に月を見上げた経験によって理解している。
数学的な抽象概念もそうだ。例えば無限という概念の意味は、長い海岸線を歩き続けたというような体験と関連付けて理解している。
人間が上のような過程を通じて言語を習得していく過程は、「シンボル・グラウンディング」と呼ばれる。日本語で「地に足がつく」というが、それと同じだ。
「シンボル・グラウンディング問題」とは、AIが言語、記号、などの意味をどのように理解するかに関連する問題である。AIは身体を持たないため、人間が行っているように「接地」させることで理解することができない。AIの理解は、言葉や記号の間の関係を理解することによって行なわれる。
これは、数学や自然科学の法則などの理解という問題の本質に関連しており、AI(人工知能)に関する基本問題として、以前から議論されてきたものだ。ChatGPTが登場して、様々な幻覚現象(ハルシネーション)の原因の1つとしてAIのシンボル・グラウンディングがあることから、再び大きな注目を集めるようになった。
本稿で考えているのは、AIのシンボル・グラウンディング問題ではなく、この概念を利用して、勉強を進めることだ。
以上で述べたのは、外国語の勉強における応用だが、文章の説得力を上げるためにも、この概念を応用できる。それは、説明をわかりやすくするために、例や比喩を用いることだ。つまり、抽象的な概念を、形のあるものに「グラウンディングさせる」のである。
イエス・キリストは、信仰の重要性を人々に理解させるために、しばしば比喩を用いた。例えば、信仰心が育つことを、麦の生育に喩えている説教がいくつもある。イエスの強い説得力は、このような比喩に支えられているところが大きい。
なお、いまの私の説明は、例示が強力かという例を示したものである 。「例を示すと説得力が高まる」と一般的にいうよりは、「キリストの説教」という具体例を示すことによって、私の主張の説得力は増強されたはずだ。
考えてみると、「シンボル・グラウンディング」という言葉自体がそうだ、「抽象的な概念を身近なものと関連付けて理解する」というような説明ではなく、「グラウンディング」と言えば、直ちにその意味がわかる。商品名でも、日常的な感覚にグラウンディングしているとよくわかる。
例や比喩を ChatGPTに教えてもらう
ただし問題は、適切な例や比喩がなかなか思い浮かばないことだ。
そこで ChatGPTの助けを借りる。「このようなことを表現したいのだが、この例として何か適切なものがないか?」「比喩として適切なものがないか?」などと聞くのである。
ChatGPTは、このような問いに対して、いくつもの候補をあげてくれる。その中には、要求に合うものがあるだろう。それを利用することによって、あなたの文章の説得力は増強される。
Google翻訳、DeepL「英語力」はITツールで補える
ビジネスでも勉強でも役立つ無料ツール8選
野崎 篤志 : イーパテント社長、知財情報コンサルタント
著者フォロー
2023/03/29
3月27日発売の『週刊東洋経済』では、「中学レベルから学び直す40~50代の英語術」を特集。40~50代から始める英語の勉強計画や中学英語をベースにした理解を早める法則、TOEICの攻略法などを紹介している。
英語ができると公私で世界が広がるが、英語が母国語でなく、40〜50代から英語を学び直すことにはいくつかのハードルがある。
英語に限らず、語学学習では「読む」「書く」「聞く」「話す」の4つのうちどのスキルを伸ばすべきか選択する必要がある。私自身、35歳のときに初めて米国企業に転職し、英語を本格的に学ぶことになった。英語の読み書きについてはそれほど苦労しなかったが、「聞く」「話す」のうち、とくに聞く=リスニングについてはかなり苦労した記憶がある。
結果的に海外の上長や同僚とビジネス会話をできるレベルまでは到達したが、「聞く」「話す」のスキルを習得することは非常にハードルが高いことを意識しておく必要がある。
無料ツールの威力
本記事では、Google翻訳やDeepLなどの無料ツールをうまく活用した英語の学び直しについて解説していく。英語を「読む」「書く」のスキルに焦点を当てたいと思う。
もちろん、現在ではYouTubeをはじめ、インターネット上にはさまざまな英語コンテンツが掲載されており、通勤中などの空き時間を利用して英語のリスニングスキルを向上させることも可能ではある。
「英語の学び直し」と表現したが、英語スキルそのものの向上ではなく、あくまでもツールを活用して英語をコミュニケーション・情報収集の手段として利用できる状態を目指している。
まず英語を「読む」ための無料ツールの活用から紹介していく。多くの方は日本語で検索を行い、日本語のウェブサイトから各種情報を収集されていると思うが、ウェブサイト上に掲載されている情報で質・量ともに充実しているのは英語のウェブサイトである。そのため、最初に英語のウェブサイトを日本語で把握するための方法について紹介する。
最初にお勧めしたいのがGoogle翻訳である。とくに覚えていただきたいのは、ウェブブラウザーであるGoogle Chromeを用いて、英語サイトを日本語に翻訳する機能である。
①のように、英語サイト上(ここでは経済産業省の英語版)で右クリックして、[日本語に翻訳]を選択すると、英語が日本語に機械翻訳される(同様の機能はマイクロソフトのウェブブラウザーであるEdgeにもある)。
ブラウザー上で簡単に翻訳
②を見てほしい。Google翻訳の画面に翻訳したいテキストを貼り付けて英語⇔日本語に変換することはできるが、ウェブサイトごと翻訳するのは手間がかかるので、皆さんはブラウザー上で簡単に翻訳できることを覚えておくとよいだろう。
翻訳専門のツールという点では③のDeepLがとてもお勧めだ。実際に使ってみると、DeepL Translatorの無料版では翻訳できるテキストの文字数に上限はあるが、出力される翻訳文は非常にこなれている。
ファイルごと翻訳
また無料版であっても1カ月につきPDF、Word、パワーポイントファイルを3つ(1ファイル当たり5メガバイト)までファイルごと翻訳することができる。
例えば英語の学術論文やマーケットリポートなどをPDFで入手したら、DeepLにアップロードしてPDFファイルごと日本語に翻訳することも可能である。
また、自ら日本語で作成したパワーポイントファイルを海外向けに英語に翻訳したい場合も、ファイルごとアップロードすることで翻訳することが可能である。
なおDeepLについては、本稿執筆時点でβ版ではあるが、文章を改善する④のDeepL Writeもリリースされており、自ら作成した英語をイギリス英語またはアメリカ英語的な観点でチェック・修正したい場合に利用できる。
ここまで機械翻訳を利用する方法について紹介してきたが、40〜50代のビジネスパーソンであればそれぞれの分野で活躍されていると想像できる。そうした専門領域における英語キーワードをチェックするという点で私がよく利用しているのは⑤のWeblio英語例文検索である。
英語を学ぶうえで単語を覚えることも重要であるが、その単語がどのような文脈で用いられているのかを知ることで、より一層記憶への定着が図れると考えられている。
その点、Weblio英語例文検索では英語の例文という形で表示されるので、日本語⇔英語のさまざまなバリエーションを知ることができると同時に、文章という形で単語の利用方法を確認することができるようになる。
英語動画から字幕を生成
英語の「聞く」スキルを習得することはハードルが高いことは上述したとおりだが、YouTubeなどの英語動画から日本語で情報収集したいという要望もあるかと思う。英語そのものを聞くこと自体は難しくても、内容を把握するのであれば自動翻訳の字幕を生成すればよいだろう。
ここでは、英語で自動生成された字幕を日本語に機械翻訳した場合を⑥に示したい(著者が2022年9月にオンライン会議で英語のプレゼンテーションを行った際の動画)。
字幕を表示させるためにはYouTubeの字幕アイコンをオンにして、設定(歯車マーク)から字幕に表示させる言語を選択する。日本語が表示されない場合は、「この設定は現在の動画のみに適用されます。すべての動画の字幕の表示設定は設定で調整できます」の設定から「字幕」のところにチェックをつければよい。ぜひ試してほしい。
ただし、字幕に対応していない動画もある。上述したGoogle翻訳やDeepLなどと比べると、日本語として読みにくいところはあるが、機械翻訳の進歩には著しいものがあるため、それほど遠くない将来にかなり精度のよい自動翻訳の字幕で英語コンテンツも視聴できるようになると私は予想している。
最後に最近大きな注目を集めているChatGPTなどのGenerative AI(生成AI)を英語学習に活用する方法を紹介する。ChatGPTに「英語を学ぶ際のChatGPTの活用方法を英語で教えてください」と質問すると、⑦のように英語で回答してくれる。
もちろん、最初は日本語で回答してもらった後に「今の回答を英語に翻訳してください」などとお願いすれば、上手に英語に翻訳してくれる。
さらに、ChatGPTを用いれば英単語のクイズを出してもらうこともできるし、何かしらのテーマに関する英語原稿のドラフトを作成してもらうことも可能である。
Perplexityは出典を明記
ChatGPT以外にマイクロソフトのBingチャットも注目を集めているが、筆者は残念ながら、まだ利用できる状況にない。今後試してみる価値はありそうだ。その代わりに今、活用しているのが⑧のPerplexity(パープレキシティ)である。
ChatGPTはチャットで質問しても、出典について明らかにしてくれない。また、ChatGPTは21年時点の情報に基づいた回答であるため、最新の情報が反映されていない。その点、Perplexityは出典を明記してくれる。
もちろん、日本語で質問すると、日本語で回答してくれるが、英語情報のほうが質・量ともにリッチなので、DeepLなどで質問文を英語にしてからPerplexityに質問し、英語の回答結果をDeepLで日本語にすれば、日本語⇔英語を気にせずに効率的に情報収集することができるだろう。
以上、40〜50代からの英語の学び直しについてGoogle翻訳やDeepLの活用というテーマで解説してきた。英語の「読む」「書く」「聞く」「話す」スキルそのものの向上・習得というよりも、無料ツールを活用することで、自らのスキルアップや各種情報収集に英語を手段として用いることができるようになる。
「英語はちょっと苦手で……」と腰が引ける人も多いだろうが、ぜひ本記事で紹介したツールなども用いて、英語アレルギーを克服していただければと思う。
学校英語では「いつまでも喋れない」悲しい理由
ネイティブの感覚を養う、英語のとらえ方が重要
田地野 彰 : 京都大学名誉教授・言語学博士(Ph.D.)
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2023/02/17
英語のコミュニケーションミスは語順が原因
英語は「語順が変わると、意味が変わる」という特徴を持った言語です。たとえば「私たちは彼をマイクと呼ぶ」を英語にするとWe call him Mike.となりますが、これがWe call Mike him.となると「マイクを彼と呼ぶ」となり、意味が通じなくなってしまいます。
日本語では「彼をマイクと呼ぶ」でも「マイクと呼ぶ、彼を」でも意味は変わりませんが、英語では語順によって意味がまったく変わってしまいます。これは英語の大きな言語的特徴です。
日本語の場合は「この橋わたるべからず」と「この端わたるべからず」のように、漢字のミスが文意を理解するうえでの大きなミスとなりますが、英語の場合は、語順のミスが決定的なミスになるのです。
日本語は語順にうるさい言語ではないこと、また、英語の語順は、日本語のそれと大きく異なっていることから、多くの日本人は、この語順をうまく使いこなせません。これが、「日本人は英語ができない」と言われる大きな理由なのです。
そこでおすすめするのが「意味順」です。実は、英語の文は「だれが」「する(です)」「だれ・なに」「どこ」「いつ」という意味のまとまりで構成されており、どんなに複雑な内容でも、この意味の順序に単語を当てはめれば、簡単に英文を話せるようになるのです。
「意味順」はネイティブの英語のとらえ方
それでは早速「意味順」で文を作っていきましょう。イメージをしやすいように、「だれが」「する(です)」「だれ・なに」「どこ」「いつ」の5つのボックスを作り、そこに単語を入れていきます。
意味順ボックスは、基本的に「左から右へ」と進みます。日本語では主語を省略することが多いので、たとえばこの例文を英語に変換する際に、「私は」の“I”や、「あなたに」の“you”がすぐには出てこない方も少なくないと思います。このような戸惑いやミスを意味の順番を意識すると防げるのです。他にも例文を見てみましょう。
ここで注目していただきたいのが、“math”は「目的語」なので……“sixty-three”が「補語」なので……といった文法用語を使って考えなくてもよい点です。「意味順って結局、SVOC の5文型のことなんでしょ?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。けれども、「意味順」とSVOCは似て非なるものです。
SVOCとは「主語+動詞+目的語+補語」であり、こうした文法用語に悩む学習者は少なくありません。意味順は「だれが」「する(です)」といったように、文法用語を使う必要がないので、主語が何で、目的語が何……といちいち文法用語に置き換えてから英文を作る必要もなくなるのです。
現実に、ネイティブはこうした文法用語に置き換えて英語を話しているのではなく、「意味」から直接英語に直しています。つまり、「意味順」はネイティブの感覚を養える英語のとらえ方なのです。
また、どんな英文にも汎用が利きます。日本人が苦手とする関係代名詞の文を作ってみましょう。意味順の枠に当てはめるだけですから、「目的語が何で、先行詞が何で……」といった「まわり道」をせずに英文が作れることを、ご理解いただけるかと思います。
「ツッコミ」で次に来る内容を予想できる
最後に「ツッコミ」を入れながら英語を話す・聞くことをおすすめします。たとえば、会話の相手が次のように言ったとしましょう。
I live(私は住んでいる)…….
ここまで聞くと、文の最後まで聞かずとも、次に「どこに?」(つまり、場所)が続くことは容易に予想できます。同様に、
I read(私は読んだ)なら、「なにを?」
I met(私は会った)なら、「だれに?」
I put(私は置いた)なら、「なにを?」「どこに?」
といった「ツッコミ」を入れることができますね。
こうした発想が可能になるのは、意味順の5つのボックスが用意されているからです。このツッコミのおかげで、日本人がミスをしがちな、主語や目的語の欠落を防ぐことが可能になります。相手の話を積極的に聞き取ることや、英文の意味を前から順に読み取る直読直解でも効果を発揮します。
「だれが」「する(です)」「だれ・なに」「どこ」「いつ」の意味の順番に、ボックスに語(句)を置いていく。
この意味順を意識していただくことで、英語の文の理解が深まり、ネイティブのように英語を使いこなすための近道となるでしょう。

