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EU 2035年以降も「合成燃料」使用のエンジン車販売で合意|TBS NEWS DIG
2023/03/29
EU=ヨーロッパ連合は28日、2035年で事実上禁止する方針だったエンジン車の新車販売を条件付きで認めることで正式合意しました。
EUは28日、エネルギー相の理事会を開き、2035年以降も「e-fuel」と呼ばれる合成燃料を使用する新車に限り、エンジン車の販売を認めることで正式に合意しました。
「e-fuel」は燃焼する際に二酸化炭素を排出しますが、製造時に二酸化炭素を資源として利用するため、排出は差し引きゼロになるとされています。
EUは、当初はハイブリッド車も含めたすべてのエンジン車の新車販売を事実上禁止する方向で議論していましたが、域内最大の自動車生産国ドイツが土壇場で反対に転じ、方針転換が迫られました。
VIDEO EU 2035年以降もエンジン車容認(2023年3月26日)
VIDEO 【超小型モビリティ EV】ちょ待っ!! 高性能で冷房効くのかーッ!【タジマ ジャイアン】
2022/08/10
軽自動車のナンバーがついた、軽の下の新規格(実証実験中)のEVに乗ってきました。予想外の出来!! ------------------------------------------ ウナ丼(UNADON)と申します。1985年以降のノーマルか、ほぼノーマル車両を紹介していますよ ※現在、撮影車両の募集はしていません
エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは
2021-07-08
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、2020年末に策定された「グリーン成長戦略」(サイト内リンクを開く「カーボンニュートラルに向けた産業政策“グリーン成長戦略”とは?」参照)のもと、あらゆる分野・産業でさまざまなチャレンジがおこなわれています。グリーン成長戦略については、2021年6月よりさらなる具体化がおこなわれているところですが(経済産業省のページを別ウィンドウで開く「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を策定しました」参照)、そのひとつに位置づけられるのが「合成燃料」の開発です。合成燃料とはどんなものか、どのような分野での活用が期待できるのか、研究が進む合成燃料について解説します。
CO2とH2から製造される「合成燃料」
合成燃料は、CO2(二酸化炭素)とH2(水素)を合成して製造される燃料です。複数の炭化水素化合物の集合体で、 “人工的な原油”とも言われています。
原料となるCO2は、発電所や工場などから排出されたCO2を利用します。将来的には、大気中のCO2を直接分離・回収する「DAC技術」を使って、直接回収されたCO2を再利用することが想定されています。CO2を資源として利用する「カーボンリサイクル」(サイト内リンクを開く「未来ではCO2が役に立つ?!『カーボンリサイクル』でCO2を資源に」参照)に貢献することになるため、「脱炭素燃料」とみなすことができると考えられています。
もうひとつの原料である水素は、製造過程でCO2が排出されることがない再生可能エネルギー(再エネ)などでつくった電力エネルギーを使って、水から水素をつくる「水電解」をおこなうことで調達する方法が基本となります。現在主要な水素製造方法は、石油や石炭などの化石燃料から水蒸気を使って水素を製造する方法ですが、この方法と組み合わせると、①化石燃料から水素をつくる ②その製造過程で発生したCO2を分離・貯留する ③その後別の回収したCO2と合成する…ということとなり、非効率な製造プロセスになるためです。
なお、再エネ由来の水素を用いた合成燃料は「e-fuel」とも呼ばれています。
こうして製造された合成燃料は、原油にくらべて硫黄分や重金属分が少ないという特徴があり、燃焼時にもクリーンな燃料となります。
合成燃料におけるCO2の再利用のイメージ
既存設備が活用できるという大きなメリット
液体の合成燃料には、化石燃料を由来とするガソリンや軽油などの液体燃料と同じく「エネルギー密度が高い」という特徴があります。つまり、少ないエネルギー資源量でも多くのエネルギーに変換することができるということです。これにはどんなメリットがあるのでしょうか?
いま、乗用車は電動化や水素化が進んでいますが、動力源を電気・水素エネルギーに転換させることがむずかしいモビリティや製品もあります。それは、現在使用されているガソリンなどの液体燃料と電気・水素エネルギーでは、エネルギー密度に大きな差があるためです。
たとえば大型車やジェット機の場合、電動化・水素化すると、液体燃料と同じ距離を移動するには液体燃料よりも大きな容量の電池や水素エネルギーが必要となってしまいます。こうしたモビリティや製品があるかぎり、液体燃料は存在しつづけると考えられています。
エネルギー密度の比較
このようなケースで、化石燃料由来の液体燃料を液体合成燃料に置き換えることができれば、エネルギー密度をキープしつつCO2の排出量をおさえることができます。
また合成燃料の大きな特徴として、従来の「内燃機関」(たとえばガソリンを使うためのエンジンなど)や、すでに存在している燃料インフラを活用できる点があります。水素エネルギーなどのほかの燃料では新たな機器やインフラを整備しなければならないのにくらべて、導入コストをおさえることができ、市場への導入がよりスムーズになると考えられます。
これまでの化石燃料と変わらない使い勝手の合成燃料は、エネルギーのレジリエンス(強靭性)やセキュリティの面でもメリットがあります。積雪により停電が発生した地域への燃料配送、高速道路で立ち往生した自動車への給油もでき、災害対応機能を持った全国のサービスステーションなどでは既存のタンクを活用した備蓄も可能です。また、国内で工業的に大量生産できること、常温常圧で液体であるため長期備蓄が可能であることなど、さまざまな優位性があります。
さまざまな分野での合成燃料の活用方法
①自動車
「グリーン成長戦略」では、自動車の電動化を推し進め、2035年までに乗用車の新車販売で電動車100%を目指すことになっています。けれども電動車の普及には、新たな車両や蓄電池の開発、電動車に対応したインフラの整備など、さまざまな課題があります。
2017年に発表された国際エネルギー機関(IEA)の見通しによると、世界的な電動化の流れの中でもエンジン車との共存は続くと見込まれています。2030年時点でガソリン車やハイブリッド車などのエンジン搭載車は91%残っており、2040年時点においても乗用車販売の84%をエンジン搭載車が占めると予想されています。カーボンニュートラルを実現するためには、これらのエンジン搭載車に供給する脱炭素燃料が重要となります。
そのための選択肢として、バイオ燃料と並んで注目を集めているのが合成燃料です。特に、電動化のハードルが高い商用車などについては、合成燃料を代替燃料として利用することで脱炭素化をはかることができると考えられます。今後は合成燃料の開発にくわえて、内燃機関の技術開発や、現在のガソリン・軽油に代わる合成燃料の国際規格についても検討していく必要があります。
②航空機・船舶
航空機・船舶の分野では、国際機関の要請によりCO2の削減目標が定められています。そのため、航空機についてはバイオジェット燃料・合成燃料、船舶については水素・アンモニアなどの代替燃料の技術開発が進められています。
航空機では国際民間航空機関(ICAO)が、2021年以降の国際航空に関してCO2排出量を増加させないという目標を採択しているため、その達成に向けてバイオジェット燃料に加えて合成燃料の活用が期待されています。すでにバイオジェット燃料は商用化されていますが、今後はその原料が不足することも懸念されています。一方、合成燃料はCO2と水素から工業的に大量生産でき、持続可能な航空燃料となる可能性があります。
③石油精製業など
既存の燃料インフラや内燃機関の活用が可能な合成燃料は、導入コストをおさえられるなど産業界にとっても大きなメリットがあります。特に石油精製業では、国内の石油需要の減少で設備能力の削減が求められる一方、余剰となったタンク、土地、人材などの資源をどうするかという課題があります。合成燃料を導入すれば、既存インフラを活用しながら新規事業に取り組むことができます。
④そのほか
灯油・LPガス・都市ガスを利用した暖房器具は、エアコンとくらべてすぐに暖まる、外気温に影響されにくいなどの特徴があり、とりわけ寒冷地域では引き続き需要が残る可能性があります。こうした場合にも、灯油などの代替燃料として合成燃料を利用できます。また、産業用ボイラーの燃料としての活用も考えられます。
合成燃料の残る課題とこれから
現在、合成燃料がかかえている課題のひとつは、製造技術の確立です。今の製造技術には製造効率の問題があり、効率の向上が課題となっています。革新的な製造技術としてさまざまな方法が研究開発の段階にあり、今後の実用化が期待されています。
合成燃料のもうひとつの課題はコストです。現状では化石燃料よりも製造コストが高く、国内の水素製造コストや輸送コストを考えると、海外で製造するケースがもっともコストをおさえることができると見込まれています。しかし、合成燃料のコストは、「脱炭素燃料である」という環境価値をふまえて考えるべきものです。既存の燃料と単純な比較をおこなうことは適切ではなく、将来性のある代替燃料として研究開発を続ける必要があります。
合成燃料の技術開発・実証は欧米を中心に急速に広がっており、石油会社・自動車メーカー・ベンチャー企業などによるプロジェクトが数多くたちあがっています。日本国内でも積極的な姿勢が重要となっています。サイエンスの観点からの技術開発にくわえ、エンジニアリングの観点から商用化のための高効率で大規模な製造技術・体制の確立を両輪として、産学官で技術開発に取り組んでいく必要があります。
今後10年間で集中的に技術開発・実証をおこない、2030年までに高効率かつ大規模な製造技術を確立、2030年代に導入拡大・コスト低減をおこなって、2040年までに自立的な商用化を目指すという計画が立てられています。
脱炭素燃料としての国際的評価の確立、海外で合成燃料が製造された際のCO2削減分の捉え方など、制度面でも議論が必要です。課題がまだ残る合成燃料ですが、環境価値だけでなく、国内での大量生産や長期備蓄が可能なことからエネルギーセキュリティの向上にも役立ちます。今後の研究開発の進展が期待されます。
e-fuel(合成燃料)とは何か? トヨタも取り組む「CO2を排出しても脱炭素」の作り方
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カーボンニュートラルに向けて、自動車などに利用するクリーンエネルギーが期待される一方、2040年のガソリン車の割合は依然として全体の84%を占めると予想されている。こうした中で注目を集めているのが、CO2と再生可能エネルギー由来のH2を合成して製造される液体の合成燃料「e-fuel(イーフューエル)」だ。ここでは、2021年4月に経済産業省の合成燃料研究会がまとめた「中間取りまとめ」を踏まえながら、e-fuelのメリットや課題、国内外の動向などについて、わかりやすく解説する。
執筆:元技術系公務員ライター 和地 慎太郎(わち・しんたろう)
e-fuelとは何か、なぜ地球に優しいのか?
e-fuel(イーフューエル:合成燃料)とは、CO2と、再生可能エネルギーによる水の電解(electric)から得られたH2を用いた合成燃料で、ガソリンや軽油などの代わりとして期待されている脱炭素燃料である。e-fuelは合成燃料の1種となるが、その合成燃料はCO2とH2を合成して製造される燃料であり、ガソリン、軽油、灯油などの混合物を含む「人工的な原油」のことを言う。
原料となるCO2は、現状では発電所や工場などから排出されたものを利用することとなるが、将来的には「DAC(ダイレクトエアキャプチャー)技術」を使って大気中のCO2を直接分離・回収したものを利用することが想定されている。
しかしe-fuelは、燃焼時に排出されるCO2が通常のガソリンを使った場合と同じである(図1)。
だが、製造時にCO2を資源として利用するため、CO2の排出量と吸収量を差し引いて全体としての排出量はゼロとなる。このため、カーボンニュートラルである「脱炭素燃料」と言われている。
e-fuelの作り方
合成燃料の製造は、600度以上の高温下で触媒を用いてCO2をCOに転換させ(逆シフト反応)、生成したCOとH2をFT合成反応(フィッシャー・トロプシュ合成反応)により行う(図2)。
ほかにも、CO2とH2を合成したメタノールやメタンなども合成燃料と呼ばれる。合成燃料がe-fuelと言われるためのポイントは「再生可能エネルギー由来のH2を使う」こと。化石燃料由来のH2を使った場合、製造過程で発生したCO2を分離・貯留した後、別途、CO2と合成させるため、製造プロセスが非効率になる。
e-fuelとバイオ燃料の違い
カーボンニュートラルな燃料として、「バイオ燃料」がすでに商用化されているが、e-fuelとは何が違うのか。
バイオ燃料は、サトウキビなどの作物や生ごみなどの廃棄物といった、バイオマス(生物資源)からつくられたバイオエタノールやバイオディーゼルなどのことを言う。米国やブラジルなどで普及している一方、日本国内においては原料不足や製造コストなどの課題もあり、バイオ燃料だけで燃料問題のすべてを解決できるわけではない。
対して、e-fuelなどの合成燃料は原料がCO2とH2で、工業的に生産できる特徴がある。e-fuelがバイオ燃料に取って代わるというよりは、両者の特長を生かして化石燃料から脱炭素燃料へのシフトを進めることが望ましい。
e-fuelの「4つのメリット」
ここではe-fuelを利用することのメリットについて、4点を紹介する。
・「既存のガソリン車」などでも利用可能
e-fuelなどの合成燃料の最大のメリットは、ガソリンや軽油と同じように使えるため、既存のガソリン車や軽油車で燃料としてそのまま使えること。もちろん、既存のガソリンスタンドの設備で使えるため、新たな設備を導入する手間やコストがかからない。
・ガス燃料や電池よりも高い「エネルギー効率」
液体燃料全般に言えることだが、水素ガスなどのガス燃料や電池と比べて、同じ体積または重量あたりのエネルギー密度が高い(図3)。
つまり、液体燃料はより少ない量で多くのエネルギーを有していることになる。電気自動車よりもガソリン車の方が、長距離移動に向いているのもこのためである。
・災害時でもカンタン供給
積雪などにより停電した地域や、高速道路などで立ち往生した自動車に対して、液体燃料であると供給しやすい。また、災害対応機能を有する既存のサービスステーションや燃料タンクを利用し備蓄できる。また常温で液体のため、H2といったほかの新燃料に比べて長期的な備蓄に優れている。
・タンクなどの「設備損傷リスク」の低減
合成燃料は、原油にくらべて硫黄や重金属といった不純物が少ないため、燃焼時に設備を傷めにくく、設備保護の面からも大気汚染の面からもクリーンな燃料という特徴がある。
e-fuelへの「4つの期待」
ここではe-fuelの活用に期待されていることについて、政府と3つの業界の観点から紹介する。
・自動車業界
自動車業界ではすでに乗用車の電動化が進んでいる。しかし電動車には、航続距離や充電時間、積載量、インフラ整備などの課題があり、特にトラックなどの商用車の電動化は簡単ではない。したがって、バイオ燃料や水素ガスに加え、合成燃料などの代替燃料の利用が期待されている。
【次ページ】e-fuelへの「もう3つの期待」や「デメリット2点」、日本と海外の「最新動向」を解説
世界が欲しがる「グリーン水素」とは? トヨタら日本企業も覇権争いで大チャンスのワケ
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燃やしてもCO2を発生しないクリーンエネルギーとして知られている水素。しかしカーボンニュートラルの実現に向けては、「利用」する時だけでなく、「製造」する過程においてもCO2を排出させない仕組みが必要である。そこで近年世界から注目を集めているのがグリーン水素だ。グリーン水素とは、再生可能エネルギー由来の電気を使って得られた水素を言う。ここでは政府の「水素基本戦略」や「グリーン成長戦略」を踏まえながら、他の水素との違いや社会実装の状況について、グリーン水素の基本をわかりやすく解説する。
グリーン水素とは何か
グリーン水素とは、再生可能エネルギー(再エネ)を使って発電された電気を使い、水を電気分解(電解)して得られた水素であり、製造時にCO2を排出しない水素だ。想定される用途としては、燃料電池車(FCV)といったトラックや船、製造工場、製鉄の還元剤など、用途は多岐にわたる。
水素を燃焼させてもCO2は発生しないが、水素を作る過程でCO2が排出される。なぜなら水を電気分解する際に電気が必要であり、その電気は通常、化石燃料を使って作られるからだ。
そして現在は、多くの水素が化石燃料を使った電気を使用して製造されている。水素は「使う」時だけでなく、「作る」時にもCO2を排出させないよう留意する必要がある。
その点、グリーン水素は、風力や太陽光など再エネを利用して作られた電気を使う。このため、電気分解を行う際にCO2を副産物として生み出すことなく、水素を製造することができる。
現在のところ、世界のグリーン水素の生産量は水素全体の数%程度だが、脱炭素社会に向けて生産量は増加傾向にある。グリーン水素が水素の主流になるのは時間の問題だろう。
日本では2017年12月に「水素基本戦略」を策定したところであり、他の多くの国でも水素の国家戦略を掲げている。各国で水素社会の構築に向けた取り組みが急速に進められ、世界で覇権争いが繰り広げられ始めた模様だ。化石燃料からの脱却を図るため、再エネ拡大に併せ、グリーン水素の意義は重要性を増す一方だ。
グリーン水素と、グレー水素・ブルー水素・イエロー水素との違い
一般的に、水素はグリーン水素のほかにも、作り方によって色分けされている。比較すると以下の図1の通りだ。
グリーン水素 再エネ由来の電気を使い、水を電気分解して得られた水素
グレー水素 化石燃料から製造される水素。製造過程で発生するCO2はそのまま大気中に放出される
ブルー水素 化石燃料から製造される水素。製造過程で発生するCO2は回収して貯留される
イエロー水素 原子力発電を使い、水を電気分解して得られた水素
ホワイト水素 何かを製造した際に副産物として発生する水素
図1:各種水素の一覧。5種類の水素はどう違うのか
ここからはさらに詳しく、グレー水素やブルー水素、イエロー水素について解説しよう。
■グレー水素
従来からある天然ガスなどの化石燃料を使って製造される水素は、グレー水素と呼ばれる。
現在、メタンガスなどから水素を製造する水蒸気改質法という方法が、工業分野で幅広く利用されている。家庭用燃料電池(エネファーム)も、都市ガスを改質させて水素を取り出すものであり、空気中の酸素と化学反応させて発電する。
グリーン水素に比べてコストが低く、現在活用されている水素の大部分がグレー水素である。しかし、化石燃料から水素を製造する際に、CO2がそのまま大気中に放出される。これでは脱炭素化にはつながらない。また、海外の化石燃料に依存する日本にとっては、国際情勢を受けやすい問題もある。
今後はより一層、グレー水素からの早期の転換が求められる。
■ブルー水素
ブルー水素は、グレー水素と同様に化石燃料から製造されるが、発生するCO2をCCSなどによって回収、貯留して製造される水素である(図2)。
CCSはCarbon dioxide Capture and Storageの略で、CO2を地中深くに貯留する技術のことである。CCSを利用できるケースでは、CO2を大気中に放出しないという、ブルー水素のメリットを享受できる。
国のグリーン成長戦略では、グリーン水素とブルー水素を合わせた水素の供給量を、2030年に年間42万トン以上にすることが目標とされている。
■イエロー水素
原子力エネルギー由来の電気を使って、水を電気分解することで得た水素をイエロー水素と呼ぶ。CO2は排出されないが、核廃棄物が残ってしまう。原子力発電が推奨されているフランスやロシアなどでは開発が進んでいるが、原子力発電を推奨しない国もあり、世界的な普及には課題が残る。
グリーン水素のメリット4つ
グリーン水素を製造・利用することは、主に以下のようなメリットが挙げられる。
CO2が排出されない
季節や時間帯によって多く生み出されてしまう電気の有効利用
電気から水素への変換で運搬が可能
エネルギー自給率の上昇
CO2が排出されないことについては先にも述べたので、ここではそれ以外の3つのメリットについて説明する。
まず、再エネは季節や時間帯によって電気を多く生み出てしまうことがあり、そのため使い切れない電気が発生する、という課題がある。しかし、この余剰の電気を水素製造に活用することで、エネルギーの有効利用が可能となる。
電気を水素に変換して貯蔵すれば、持ち運びが可能となる。このため、発電所から離れた場所へ運搬できるようになる。
また、化石燃料に乏しい日本において、グリーン水素を自国で製造できるようになれば、エネルギー自給率の上昇が期待できる。なお、日本のエネルギー自給率は12.1%(2019年度)と、OECD(経済協力開発機構)36カ国中で35位とかなり低い水準にあり、グリーン水素が救世主となり得るだろう。
グリーン水素の課題
国際エネルギー機関(IEA)によると、現在の水素のコスト(1キログラム当たり)は、グリーン水素が3~8ドル、ブルー水素1~2ドル、グレー水素0.5~1.7ドルとされている。現状では、グリーン水素のコストに課題が残るが、今後は価格が下がっていくと予想されている。
水素基本戦略では、「低コストな水素利用の実現」として、海外の安価な未利用エネルギーとCCSを組み合わせる水素(ブルー水素)、または安価な再エネから作られる水素(グリーン水素)を大量調達するアプローチを基本的な考え方としている。
そのためには、水素を「作る」「貯める・運ぶ」「使う」まで一気通貫した国際的なサプライチェーンの構築を進めなければならない。
具体的には、2030年ごろに商用規模のサプライチェーンを構築して、現在の販売価格の1/3以下となる30円/ノルマル立方メートル(温度0℃・圧力1気圧の時の体積)程度の水素コストの実現を目指す。
さらに2030年以降は、供給面での国際水素サプライチェーン拡大と、産業分野などでの利用を進めることで、2050年にはガス火力以下となる20円/ノルマル立方メートル程度まで水素コストを低減させる目標だ。既存エネルギーと同等のコスト競争力の実現を目指す。
グリーン水素の作り方
グリーン水素は、再エネ由来の電気を使って、水電気分解装置により水を電気分解して作られる。水の電気分解技術は以前から研究開発が進められているが、現在は「アルカリ型」と「固体高分子(PEM)型」の2種類が実用化されている(図3、図4)。
アルカリ型水電気分解装置とは、水酸化カリウムの水溶液を電気分解して水素を製造するものである。特徴は、高効率、低コスト、大型化が容易であることだ。
一方、固体高分子型水電気分解装置とは、電極と電極の間に固体高分子(PEM:Polymer Electrolyte Menbrane)を用いて水を電気分解し、水素を製造するものである。特徴は、小型化しやすいことや、発電量が変動しやすい再エネへの柔軟性の高さだ。なお、燃料電池にも固体高分子が用いられている。
グリーン水素の日本企業による事例
国内では、水電気分解装置を活用した水素社会のモデルとなる取り組みが、自治体と企業によって行われている。
特に近年取り組みが盛んなのが、トヨタや旭化成などが参画・進出している福島県と、東京電力や東レなどが参画・進出している山梨県だ。それぞれ、アルカリ型水電気分解装置、固体高分子型水電気分解装置を活用した社会実装が進められている。
合成燃料について:
最近「合成燃料」という言葉を聞く機会があった。懐かしい言葉だと思って聞いてみると、2050年のカーボンニュートラルを目指すグリーン成長戦略にも出ているとのこと。自分の知っているものとは違うような気がして、調べてみた。
まず、自分の記憶に整合したものとして、2008年7月にエネルギー経済研究所の研究者が発表した「合成燃料の現状と今後の動向について」という論文があった。サマリーの冒頭に「石炭・天然ガス・バイオマスなど、炭化水素を起源とするものの、そのまま利用するには制約があるため、ガス化(分解)・合成を行い、新たな炭化水素(常温常圧で液体)を合成する、いわゆる「合成燃料」」と書かれていて、やはり天然ガスから液体燃料を作る(GTL Gas to Liquids)とか、石炭から液体燃料を作る(CTL Coal to Liquids)とかのことであるとわかる。そして、中東を中心としたGTLプロジェクトは天然ガス価格や建設コストの高騰により一部を除き計画が中止されており、他方で中国のCTLプロジェクト等は進んでいると報告されている。バイオマス由来の液体燃料があるにしても、それでは2兆円のグリーンイノベーション基金を使って行われるグリーン成長戦略に登場するのは難しそうである。
次に見つけたのが、経済産業省の合成燃料研究会が2021年4月に発表した「中間とりまとめ」である。こちらも合成燃料の定義から書き出している。「合成燃料とは、CO2(二酸化炭素)とH2(水素)を合成して製造される燃料である。」と書かれており、さらに注釈がつけられていて、その注釈を要約すると「これまでは上記(エネルギー経済研究所の論文)のような定義であった。CO2を炭素資源とする合成燃料というのは今までにない定義である。」と説明している。そして合成燃料は大きく気体合成燃料と液体合成燃料に分けられるが、この研究会では主に後者の液体合成燃料について検討するとしている(なお、気体合成燃料については「メタネーション」として別の場で検討されているが、基本的な考え方は同じである)。
「中間とりまとめ」を簡単に要約すると、次のとおりである。
「液体合成燃料はエネルギー密度が高いという特色があり、電気や水素エネルギーでは代替することが困難な用途がある。特に輸送部門では航空機や船舶など大型のものになればなるほど液体合成燃料のニーズは高く、当面はバイオマス由来のバイオ燃料で対応するにしてもバイオマス資源の制約から供給量にはおのずと限界がある。その点、CO2とH2の合成なら工業的に生産できるので大量生産のポテンシャルは高い。また、液体合成燃料であれば既存の燃料インフラや内燃機関をそのまま利用できるので、導入が容易である。
他方で、合成燃料の生産をカーボンニュートラルのために行うという視点で見ると、原料となるCO2は原料用に新たに作られたものでは意味がなく、分離・回収技術によりリサイクルされたものでなければならないし、H2もCO2を排出しないプロセスによって作られたものでなければならない。そしてこれを合成するためのプロセスも効率的なものでなければならず、これらの諸課題についての研究開発の推進が必要である。」
一般に、CO2を排出せずにエネルギーを使う方法としては、①太陽光、風力等の自然エネルギーや原子力を使う、②発生するCO2を地中に閉じ込めて大気中に出ないようにする、③CO2を分離・回収して再利用するプロセスをつくるという3つが考えられ、本件は③のいわゆるカーボンリサイクル技術に該当すると考えられる。
合成燃料をめぐっては、海外でも数多くのプロジェクトが進められているが、国内でも2021年9月に東芝エネルギーシステムズ株式会社、出光興産等6社が環境省から4年計画でCO2とH2から持続可能な航空燃料(SAF)を作る実証事業を受託して、実施中であり、また、2022年4月にはENEOS株式会社がNEDOのグリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いた燃料製造事業技術開発プロジェクトに採択されたところである。ENEOSの計画では2022年度から2025年度で小規模プラント、2024年度から2028年度で大規模パイロットプラントの建設・運転を行うとされており、今後の進展が期待されるところである。
ちなみに古い定義での合成燃料開発も行っていたENEOS株式会社の研究開発を紹介するホームページでは、過去のものと区別するためか、二酸化炭素から合成燃料を作るというテーマについては「再エネ合成燃料」と表記している。
(R4.8 R.I)
CO2と水素の合成燃料は脱炭素の切り札になるか
成蹊大学の里川重夫教授に聞く合成燃料の現在地
山田 雄大 : 東洋経済 解説部コラムニスト
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2022/07/27 5:40
――合成燃料はどこまで実現している技術なのでしょうか。
技術自体は昔からある。ナチス時代のドイツでは輸入石油のほぼ2倍の人造石油を作っていた。大量の石炭から油を作っていたわけである。
化石燃料を使ってはいけない
――合成燃料は脱炭素の切り札になるということでしょうか。
そんな簡単な話ではない。合成燃料はもともと石油以外の化石燃料から石油を作る目的の技術だ。しかし、今望まれているのは脱炭素だから、化石燃料を使ってはいけない。化石燃料を使わないで原料を調達し、それを合成して初めて脱炭素につながる。
グリーン水素をどうやって調達して、さらにCO2をどうやって集めるか。そこに課題がある。再生可能エネルギー(再エネ)由来の電力から電気分解でグリーン水素を作ることはできるが、コストの問題がある。CO2の濃縮・回収も難しい。化石燃料からでなければ、大気からCO2を回収しないといけない。
――火力発電所などから出るCO2を回収して利用するCCU(二酸化炭素の回収・利用)が想定されています。
火力発電所は石炭や天然ガスを掘って燃やしている。そこで出たCO2から合成燃料を作っても、それを使えば結局CO2を出してしまうので意味がない。
――大気からCO2を回収するDAC(ダイレクトエアキャプチャー)という技術を使えばよいのでしょうか。
DACの実用化は設備的にもエネルギー的にも相当難しい。個人的にはバイオマス利用が有望と考えている。バイオマスなら植物の成育時に大気からCO2を吸収している。一般廃棄物の75%がバイオマス由来なので、廃棄物のバイオマス発電の電力を使って電気分解した水素と、排ガスに含まれるCO2を回収すれば合成燃料を作ることができる。
ただし、ここで得られる水素量は排ガス中に含まれるCO2量の1%にも達しないので、大量の再エネ由来のグリーン水素を別途獲得することが条件となる。
――それが良いかは別にして、コストを度外視して、合成燃料を大規模に量産すれば、ガソリン車のまま脱炭素が可能になるのでしょうか。
現実的ではない。化石燃料を使わないでグリーン水素とCO2を徹底的に集めても通常の大型精製プラントの100分の1から1000分の1規模にしかならない。小型乗用車なら単純にEVにすればよいと考える。
――合成燃料の開発は無駄なのでしょうか。
そんなことはない。合成燃料の必要性を考えるには、まず将来のエネルギーを考えるところから始めるべきだ。脱炭素を目指す以上、化石燃料は使えない。すると主力となるのは再エネしかない。
太陽光、水力、バイオマスなど再エネ由来の電力をそのまま使うのが一番なので、EVや電車、家庭のエネルギーは再エネ電力で賄うのが基本だ。よく「EVにしても火力発電で作った電気を使えば脱炭素にならない」と言うが、それは当たり前。電力を再エネ由来にしていくことが大前提だからだ。
しかし、電力には「同時同量」の原則がある。再エネ電力は不安定なので貯めておく必要があるが、電池では限界がある。そこで余った電力で水素を作る。水素は電力に比べると貯蔵しやすい。貯蔵しておいて使いたいときに燃料電池や水素エンジンで使う。
ただし、水素もそう簡単に貯められるものではない。長期間、安全にエネルギーを備蓄するために初めて合成燃料という選択肢になる。既存の石油備蓄基地があるのでそれを使えばいい。
ルールを作り、必要性を議論すべき
電気でできるところは電気のまま使う。それでも難しいところは水素を使う。さらにバイオ燃料。電化できない、水素でもできない、バイオ燃料でも足りない領域、そこを合成燃料に変えていく。再エネ電力で合成燃料を作れば、とりあえずエネルギー全部の脱炭素ができる。
――それほど合成燃料のハードルは高い。コストが高い、と言い換えてもいいと思いますが、社会で使われるのでしょうか。
当然コストは高いが、むしろ経済の問題だ。例えば、航空業界には植物などを由来にするSAF(持続可能な航空燃料)というものがある。通常のジェット燃料の6倍か7倍の価格だが、国際的に一定の使用を義務付けることで取り合いになっている。
結局はルール作りが大事になる。カーボンプライシングも含めて、脱炭素のために国際的にどんなルール作りをするのか。その中で、合成燃料は必要なのか不要なのか、そういう議論が大事になってくる。
高価な合成燃料を使うくらいなら、やり方を変えるというアプローチもあるかもしれない。例えば、トラクターをEVにすると1時間で電池がなくなるので使い物にならない。だから、合成燃料の軽油が必要になる。だが、10倍の価格の軽油を使って農耕をするのか。それならば、再エネ電力を使った人工栽培の方が良いかもしれない。
そういったゲームチェンジがいろんなところに出てくる。そうすると、もしかすると合成燃料はいらないのかもしれない。
――合成燃料研究会ではコスト試算もされています。
国内、海外の再エネ電力価格や石炭火力からのCO2回収コストなどから試算するとこのくらいのコストになるというだけの話。将来的にいくらになるか全然わからない。
――つまり、それぐらい合成燃料は大変ということですね。それでも合成燃料の技術開発は必要だと思います。日本で実用化するのにどういった問題がありますか。
合成燃料も資源戦略として考える必要がある。アメリカやヨーロッパは資源戦略として取り組んでいる。日本は資源を輸入することが前提となっている。現在の脱炭素の取り組みも石炭火力の延命措置になってしまっている感じもする。
省庁が縦割りであることが問題を難しくしている。資源エネルギー庁は海外から資源を買ってきて国内に安定的に流通させる役割なので、資源を作ることに対応していない。資源を作るとなると、どちらかというとバイオ燃料で農林水産省マターになってしまう。
脱炭素なら環境省だ。合成燃料というエネルギー製造はまったく新しい概念なので現在の政府組織では対応が難しいだろう。むしろ、地方に期待をしている。
再エネ電力と水素、合成燃料は地方で作る
山梨県では、県の企業局で水力発電と太陽光発電をやっている。余剰電力で大量の水素を作ることに成功した。そこで地域のバイオマスを使ってCO2を集めて合成燃料を作ることができれば、脱炭素合成燃料ができると考えている。山梨で油が作れるという話になれば、「わが町でも」と、どんどん他の地方にも伝播していくのではないか。
再エネ電力を電力会社から買って合成燃料を作るのはやめた方がいい。電力会社は安定供給に責任を持つので高コストになるのは当たり前。
再エネは「コストがかかる」というが、設備は社会インフラなので、一度作ってしまえば、作れば作るほど安い電力が使えるようになる。もちろん、変動のリスクは自分自身で吸収することが原則だ。再エネ発電も水素製造も、合成燃料の製造も個々の企業や地方自治体が自ら取り組む課題ではないか。
合成燃料は原油と同じでガス、ナフサ、軽油、ワックスなどが混じった物ができる。ここからガソリンや軽油などを精製するのは既存の石油会社に任せればいい。関東一円で作られた合成燃料が湾岸の製油所に送られてジェット燃料になるといったイメージだ。
そういう流れは作れると思う。はたしてどれだけの量が作れるかはまだわからない。計算しようがない。将来は海外の再エネで作ることも考えられる。国内だけでやる必要はない。日本がノウハウや技術を作り上げて世界に提供していけるようになれればいい。